上顎前突(出っ歯)とは?
上の前歯が前方に飛び出した状態を言います。
日本人に比較的多い歯列不正で、矯正を希望される方も多いです。
出っ歯の原因
歯の傾きや位置の異常に由来する「歯性(しせい)」と、顎の骨の大きさ・バランスの異常に由来する「骨格性(こっかくせい)」の2つに大きく分けられます。
歯性の出っ歯
上の前歯が前方に傾いているか、前方に位置していることで出っ歯の症状が現れているタイプです。歯の傾きや位置を整える歯列矯正で症状の改善が見込めます。歯性の出っ歯は、次のような習慣・習癖で誘発されます。
口呼吸
指しゃぶり
舌を前に突き出す癖(舌突出癖)
爪を噛む癖(咬爪癖)
唇を噛む癖(咬唇癖)
こうした習慣・習癖に早期にアプローチし改善する必要があります。
骨格性の出っ歯
上の顎の骨が大きい、あるいは下の顎の骨が小さいことで、上顎骨が相対的に前に出ているタイプです。骨格の形や大きさは、遺伝的な要因に左右される部分が大きく、歯列矯正で改善できる範囲は限られています。顎の骨が成長する力を利用できる小児矯正なら、骨格性の出っ歯の症状も根本から改善できることもあります。
出っ歯の矯正治療開始時期
お子さまは年齢とともに徐々に顎が成長するため、矯正治療をスタートするタイミングには注意が必要です。顎の発達がストップしてから治療を始めると、効果が不十分なこともあります。
お子さまの出っ歯の治療は、成長に応じて上下の顎のバランスを整える目的で行います。そのため、発達がストップする7~9歳くらいまでに矯正治療をスタートすることが望ましいです。
成長度合いはお子さまにより異なるので、なるべく早めに専門の医師にご相談ください。
出っ歯を放置すると…
出っ歯の放置はさまざまなリスクが伴います。
顎関節症のリスク
上下の前歯の噛み合わせに問題があると、奥歯に負荷がかかり、顎の骨に均等に圧力がかからず、顎関節症が起こる恐れがあります。
前歯を損傷・破折するリスク
衝突や転倒、事故などによって、前歯を損傷・破折するリスクが高まります。
歯周病や虫歯になるリスク
上の前歯が前方に飛び出して下顎と噛み合ないことによって口を閉じられなくなると、口内が乾燥して菌が増殖し、口臭が強くなるほか、歯周病や虫歯になるリスクが高まります。
インフルエンザや風邪などの感染症のリスク
出っ歯によって口呼吸が習慣化すると、細菌やウイルス、ほこりが直接体内に侵入するため風邪を引きやすくなります。また、インフルエンザなどの感染症も発症しやすくなります。
出っ歯は審美的な問題に加え、健康上にも悪影響を及ぼす可能性があります。
お子さまは大人以上に身体的に活発に活動するうえ、病気やケガに対する危機管理の意識が不十分です。そのため、さまざまな健康上のリスクを伴います。
出っ歯の矯正治療
成長期の子どもの出っ歯治療では、症状の原因や程度などに応じた最適な治療が求められます。
矯正治療は1期治療・2期治療に大別され、それぞれ治療法に違いがあります。
1期治療(小児矯正)
乳歯と永久歯が混在した混合歯列に対して行うもので、対象年齢は6~12歳です。
2期治療(成人矯正)
永久歯が全て生えてから行う矯正治療です。
骨格の問題による出っ歯は、外科手術を要することもありますが、口呼吸や悪癖などの習慣による出っ歯は、永久歯が適切に生えるよう促す1期治療を実施します。
当院の治療では、日中1時間と就寝時に装着するマウスピース型の筋機能矯正装置を使用します。顎の正常な発達を促し、口周辺の筋肉を鍛えることで、美しい歯並びを目指すこともできます。
永久歯は12歳ごろで生え揃うため、矯正を要する場合は2期治療で噛み合わせや歯並びを調整します。また、出っ歯だけでなく不正咬合を併発していることもあるため、慎重に治療方法を検討していきます。